(最終更新日:2023年10月12日)
2022年4月1日より、一定数以上の車両を運行させる事業所において車両運行者に対する、目視によるアルコールチェックと書類の保管(1年間)が義務化されました。
導入が昨年より延期されていました白ナンバーの事業所における、機器を使用したアルコールチェック義務化ですが、アルコール検知器の供給状況が改善されてきたことから、2023年12月1日より法改正により導入されることが、6月8日に警察庁より発表がありました。今後はパブリックコメントを募集してた後に内容を精査して正式決定される予定です。なお、2022年3月末現在で安全運転管理者を選任して警察に届け出ている白ナンバー事業者は、全国に約35万2千あります。(2023年6月11日現在)
こちらでは、事業所での安全運転管理者やアルコールチェックなどについて、随時更新して紹介してまいりますので、ご参考にして戴ければさいわいです。
1.安全運転管理者について
安全運転管理者制度は、「一定台数以上の自家用自動車(白ナンバー車)を使用する事業所等において、自動車の安全な運転に必要な業務を行わせる者を選任させ、道路交通法令の遵守や交通事故の防止を図ることを目的」とした制度になります。
(1)安全運転管理者が必要な事業所
5台以上の自動車(自動二輪は0.5台で換算、原付きは含まない)を使用する事業所、または乗車定員が11名以上の自動車を1台以上保有する事業所が該当します。なお安全運転管理者は本社に1名いればよいわけではなく、前記規定の台数以上を使用する各事業所(支店や営業所等)ごとにおくことが必要です。
また、20台以上の自動車を使用する事業所は、20台ごとに1名ずつの副安全運転管理者もおかなくてはなりません。
(2)安全運転管理者の届け出
安全運転管理者の選任や変更後は、15日以内に事業所の所在地を管轄する警察署への届け出が必要になります。また専任していない際の罰則は2022年10月1日より大幅に引き上げられ50万円以下の罰金、届け出を怠った場合は2万円以下の罰金となりますので、必ず選任して届け出を行いましょう。
(3)安全運転管理者の選定条件
安全運転管理者には、以下の選定条件があります
安全運転管理者 | 副安全運転管理者 | |
年齢条件 | 20歳以上(副安全運転管理者が必要な場合は30歳以上) | 20歳以上 |
実務経験 | 自動車運転の管理に関する経験2年以上 (副安全運転管理者または安全運転管理者補助など) | 自動車の運転歴3年以上 自動車運転の管理に関する経験1年以上 |
人数 | 1名 | 車両20台につき1名 |
欠格要件 | 以下いずれかの違反を起こしてから2年以上を経ていないこと ・ひき逃げ ・無免許運転や飲酒運転、またはそれらに関わる車両の提供 ・妨害運転 ・自動車制限命令違反など | 安全運転管理者と同一 |
(4)安全運転管理者の業務内容
- 運転者の適性の把握
- 運行計画の作成
- 危険防止のための交替運転者の配置
- 異常気象時の安全運転の確保
- 点呼・日常点検の実施及び安全運転の確保のための指示
- 運転日誌の備付けと記録
- 運転者に対する安全運転指導など
(5)安全運転管理者法定講習
安全運転管理者は、各都道府県公安委員会が年に1回行う、「安全運転管理者法定講習」を受けることが義務化されています。講習の開催日時や場所は、各都道府県によって異なりますので、事業所所在地の最寄りの警察署交通課交通総務係や安全運転管理者連合会、交通安全協会などで必ず確認をしておくことが必要です。なお、講習時間はおおむね正味6時間ほど掛かります。
2.事業所のアルコールチェックについて(2023年6月11日以後、変更の可能性があります)
安全運転管理者の選定が義務化されている事業所では、既に目視によるアルコールチェックが2022年4月1日より義務化されていますが、今後は目視に加えてアルコール検知器によるチェックが義務化されますので、その内容を紹介させていただきます。なお、検知器には使用期限や定期的な校正作業が必要などがありますので、機種選び際にはご確認ください。また、チェックは車両の運行前と運行後に必要です。
(1)アルコールチェック検知器について
アルコール検知器は測定部分に息を吹きかけて、残留アルコールの濃度を検測する機器です。一般的に使用される検知器は、残留濃度を測定するセンサーの違いによって下記の2つの種類がありますので、使用頻度や予算などを考慮して入手するとよいでしょう。
①半導体センサー式
メリットとしては、価格も安いこと、機器が軽く小型なこと、測定速度が速い、低濃度での感度がよいなどが挙げられます。デメリットとしては、アルコール以外のガスにも反応しやすいこと、センサーの寿命が短いなどです。
<補足>飲酒をしていなくても反応することがあるものとして、歯磨き粉などに含まれるキシリトール、エタノールを含んだマウスウォッシュ、キムチや納豆などの発酵食品、タバコなどが挙げられます。また、甘酒や粕汁などはアルコールを含んでいるものもありますので、注意が必要です。
②電気化学式
メリットとしては、アルコール以外のガスには反応することがほとんどないこと、耐久性が高いことなどがメリットですが、測定に時間がかかるのと価格が少々高いことがデメリットになります。また、定期的に校正が必要です。
(2)アルコールチェックの確認者
アルコールチェックの確認者は安全運転管理者が行うことが必要ですが、不在などの際には副安全運転管理者や安全運転管理者の業務を補助する者が行うことができます。*飲酒を検知した際には、安全運転管理者による措置が必要です
また、直行・直帰などで対面でのチェックができない場合は、携帯型アルコール検知器を携行させた上で、スマホのビデオ通話やカメラ、クラウドシステムなどを用いてチェックするなどして、対面と同様なチェックを行うことが必要です。(2023年10月12日追記)
(3)チェックした記録は1年間の保管が必要です
2022年4月1日以降の目視のみのチェック同様に、チェックの記録は1年間の保管義務があります。またチェックする項目については特にフォーマットはないようですが、下記の項目を記録しておくとがよいでしょう。
①確認者(安全運転管理者)②運転者 ③車両ナンバー ④確認の日時 ⑤確認方法 ⑥酒気帯び運転の有無 ⑦指示事項 ⑧その他特記事項
また、記録の保管方法については書式やファイル形式など指定がありませんので、書面またはエクセルなどのアプリで作成したものを保存しておきましょう。(2023年10月12日追記)
(4)チェックした記録もクラウド管理が可能に
最近ではスマホなどに専用アプリをインストールして、クラウドで管理ができるものもあります。遠隔地からの操作が可能で、GPSを利用して検査場所の特定ができる機能や、データーをCSVに一括登録や変換もできることから、管理も楽になることがメリットです。中には運転免許証のチェックや体温チェックができるなど多機能なものもあり、導入する企業も増えているようです。
(5)飲酒運転が発生すると事業所にも罰則があります
業務中の飲酒運転が発生すると、運転者には道交法上の罰則があることはもちろんですが、事業所にも行政処分が下される場合もあります。飲酒運転が初犯の場合は車両の使用停止100日間、再犯については使用停止200日間と、かなり厳しいものです。また、飲酒運転を黙認した際には14日間の事業停止、飲酒運転が発生して事業者が指導監督義務に違反していた場合は3日間の事業停止処分となります。